「心の苦しさ」の根本原因は、既に分かっている

前の 心を理解するための方向性 のところで説明した、「理解の方向性(その4)」に当てはまる出来事は、人によって様々です。
また、「理解の方向性(その5)」に当てはまる事柄も、国・地方・家庭などの生育環境によって様々です。
しかし、「理解の方向性(その6)」で示している『根本原因』だけは違います。
他の2つと同様に、『根本原因』となることを学習してしまった事情や経験は、人によって様々です。
ですが、それらの事情や経験によって学習してしまったことは、悩みを抱え込んでしまう人全てに共通なのです。
一般的には、心の苦しさの原因を追究するために過去を振り返るとき、「理解の方向性(その4)」のように過去の出来事に焦点が当たることが多いと思います。
しかし、「理解の方向性(その5)」、「理解の方向性(その6)」のときは、
- 何を学習したのか?
というところに焦点を当てます。
「理解の方向性(その5)」の学習は、それそれの人の中にありますから、個別に見つめていかなければ、その正体を理解することはできません。
(逆に、国・地域・家庭の共通点を見つめて、それらとの相違点を浮き彫りにするという方法はあると考えますが・・・。)
ところが、「理解の方向性(その6)」の『根本原因』となる学習については、答えが出ているのです。
それは、
- 泣いていても抱きしめてもらえない
- つらい気持ちは我慢するしかない
といった学習です。
「根本原因は何?」
その問いの答えが出ているのですから、あとは、その答えを活用すれば良いのです。
つまり、その誤った学習を正しい学習で置き換えさえすれば良いのです。
- 悲しい気持ちの自分を抱きしめてくれる人がいる
- 誰かに抱きしめてもらいながら、思いっきり泣くことができれば、スッキリとして楽な気持ちが戻ってくる
カウンセリングの目的
余談ですが・・・
カウンセリングの大きな目的は、前に示した『根本原因』となっている誤った学習を、次のような経験繰り返すことで、正しいものへと置き換えていくことにあると考えています。
- 悲しいときに泣いても責められない人がいる
- 悲しいときに「悲しい」といったら、親身になってくれる人がいる
- 悲しいときに、誰かに見守られながら泣けば楽になった
という経験を繰り返すことで、理解の方向性(その6)で示す『根本原因』となっている学習を、正しいものへと置き換えていくことにあると思います。
それと、もう一つ。
そんな話し相手になってくれる人が、たまたま、自分の周りにいなかったときに、緊急避難的に活用するのがカウンセリングだと思っています。
カウンセラーだけでなく、相談者(カウンセリングを受ける人)が、このあたりのことをきちんと理解せずにやっていると、解決ばかりに意識が向かってしまいカウンセリングは失敗に終わる可能性が高まると考えます。
- カウンセラーが相談者に改善することを要求する(責める)
- 相談者がカウンセラーに問題の解決を要求する(責める)
どちらかがどちらかを責めていたのでは、カウンセリングの場から、親身になったり、心を許したりする雰囲気が消えうせてしまいます。
そして、カウンセリングルームは、議論が行われるだけの会議室(ただ苦しいだけの場)となってしまいます。
本当の解決は、意識している解決とは違うところにあるのです。