心を楽にするために振り返る子育て

Lesson 7 トラウマは心の苦しさの原因ではない

今ではすっかり一般的な言葉として受け入れられている『トラウマ』という言葉ですが、この言葉が作り出す誤解が、心の苦しさの解決を妨げるところもあると考えています。

今回は、この『トラウマ』という言葉について説明することにします。

トラウマの専門的な説明

カウンセリング辞典によれば、トラウマは心的外傷という言葉を用いて、次のように説明されています。

心的外傷個人の精神生活に衝撃を与えるような出来事があり、それがあまりにも強烈であるため適切な対処が出来ず、無意識下に抑圧されて長期にわたる障害をもたらすような体験を言う。

一つだけの出来事で外傷となる場合と、いくつかの出来事が重なったために外傷となる場合とがある。

また、同じような出来事でもそれが外傷になるかどうかは個人の側の条件にもよる。

例えば、葛藤が存在しそのために防衛機能が効果的に働かないなどの理由による。

最後の「例え」は分かりにくいので読み飛ばすと、ポイントは次の3つです。

  1. 心に傷を作ってしまうような出来事がある
  2. 心の傷は長期にわたって障害をもたらすことがある
  3. 同じような経験をしたとしても、心の傷になるかならないかは、人によって異なる

前述2の文中にある障害という言葉は

  • 精神症状を引き起こす
  • 問題行動を引き起こす
  • 心の苦しさを抱える込む

というように書き換えることができます。

つまり、つらい出来事が原因となり心に出来た傷を『トラウマ』と呼び、『トラウマ』は心の苦しさや精神症状の原因となるということが説明されています。

日常会話の中でのトラウマの意味

次に、普通の生活の中で、私たちが使っている『トラウマ』の意味を考えてみます。

前に説明したように『心の傷』という意味合いを持ってはいるのですが、どちらかというと『つらい出来事の記憶』というニュアンスで使っているように思います。

つまり、『 心の苦しさや精神症状の原因 = トラウマ = つらい出来事(つらい出来事の記憶) 』という認識です。
しかし、これは間違っています。

心の苦しさの本当の原因

では、本当の問題とは何なのでしょうか?

本当の問題は、「どうして、その出来事によって感じた心の苦しさを、トラウマにしてしまったのか?」ということです。

次の文章を読み比べてみて下さい。

  • その時の心の苦しさを、その時に解消することが出来なかったのは、なぜか?
  • 今の心の苦しさを、今解消できないのは、なぜか?

今と昔という時制の違いはあっても、心が苦しくなったときに、それを解決できないという意味では同じ状態であるということに気付くと思います。

そして、今の自分の心の苦しさを楽にしてあげることができれば、もう、過去の出来事など気にならなくなります。

では、なぜ、心の苦しさを解消できたりできなかったりという違いが生じるのでしょうか?

それは個人の心の問題ではありません。

心が強いとか心が弱いとかいった問題ではないということです。

ただ、心の苦しさに対処する習慣が違うだけなのです。

この心の苦しさを解消する方法は、Lesson 1 ~ Lesson 6 で説明しましたので参考にして下さい。

ポイントだけ書くと、安心できる相手を見つけて、次の2つをすることです。

  • 自分の気持ちを素直に話し、じっくりと聴いてもらう
  • スッキリするまで泣く

なぜ、トラウマを心の苦しさの原因と思ってしまうのかは偽解決というキーワードによって説明できるのですが、長くなるので、次回に説明したいと思います。

補足

安心して気持ちを話し、心の苦しさを解消するために

どのような相手だと安心して気持ちを話せるのでしょうか?

一般的には、次のようなところを重視しがちのようですが、大して重要ではありません。

  • 価値観が同じ(似ている)
  • 考え方が同じ(似ている)
  • 同じような経験をしている
  • 同じような境遇に置かれている

それよりももっと大切なポイントがあります。思いつくことをいくつか挙げておきます。

  • 人の話を遮らない
  • 解決策を人の代わりに考えようとしない(物事の解決にこだわらない)
  • 自分の考えを押し付けようとしない
  • 細かいことは分からなくても、一生懸命に理解しようとしながら聴いてくれる
  • 「何とかしてあげたい」という気持ちが強くない
  • 自分が悩んでいる事柄に対して、特にこだわりを持っていない

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